2006年10月7日からの3連休、北アルプス・東北などの山の天気は大荒れとなりました。
残念ながら、白馬と穂高で遭難事故が発生、登山者の尊い命が奪われる結果となりました。要因は色々重なったとは思いますが、私は気象遭難といっていい事例と思っています。

 ここでは気象にスポットを当てて、事前に正しい判断をするにはどうしていたらよかったのか、判断するためにはどの程度の知識が必要なのかを考えてみました。

 

 

さて、問題の週末前に時を戻します。

木曜日の天気図は図1のような状態でした。
先週、先々週に引き続き週末を狙うように南海上に台風が発生しています。 今回は2つもあります。しかし台風の中心気圧は990hPa、985hPaと弱いものです。
この地上の天気図だけを見ていると、台風は今後弱って消滅するとも言えそうですし、週末には台風直撃の可能性もありえそうに見えます。

教科書的には、台風は秋雨前線を刺激し前線の活動が活発化する可能性を予測する必要があります。

 

金曜日の朝には図2のような天気図になりました。昨日と大きく違うところは関東南海上に温帯低気圧が発生しました。教科書通り、秋雨前線の活動が活発化したようです。しかしこの段階の低気圧は984hPaと、とても弱いものです。

登山者は金曜の夜か土曜日の朝、出かけます。つまり図2の天気図を見て最終判断をすることとなります。下の図3-1は見れないのです。図3-1は土曜日の12時ごろに発表されます。従って図3-1は入山してしまった登山者にとっては結果論でしかないのです。

金曜昼の図2が発表された時点で図3-1を予想できれば、入山を控えることができたでしょう。日程が短縮したり、予定の場所から変更になるかも知れませんが後半二日で楽しい登山ができたはずです。しかし、図3-1を予想できず安易に入山すると最悪遭難という結果になってしまうのです。

 

 

さて、結果的には土曜日は下の図3-1のような天気図になりました。見ての通り、低気圧が発達し日本列島では等圧線が縦に密集している形になりました。言わずと知れた冬型と同様の気圧配置です。強い北風が吹き、日本海側では強い雨、山では確実に吹雪です。こんな天気図の時に日本海に近い北アルプスに行けば....

普通の人は(気象マニアでもなければ)地上天気図だけを見ています。金曜の時点で誤りがちな予測は図3-2のような気圧配置になるのではと考えることです。図2から図3-2を見てください。ありえそうな変化ですよね。もしこのような天気図になっていれば、風は強そうなものの、大荒れの天候にはなりません。雨も南ほど心配で北アルプスは晴れ間もあったかも知れません。しかし図3-2のようにはなりませんでした。

それは何故か?この温帯低気圧は発達する要因があったのです。専門家やマニアの見る高層天気図を見ると図2の台風の辺りに非常に暖かく湿った空気があること、日本列島に強い北西風が吹いており寒気が流入しやすい状況であることが示されています。高層天気図を見ている人には冷たい空気と暖かい湿った空気がぶつかり合い低気圧はさらに発達し、図3-2にはならず、図3-1になることが予測できたのです。

ちっょと難しい話になってしまいました。そうすると登山者は高層天気図を読みこなせなければならないのか!
私の結論は「必ずしもその必要はない」です。(もちろんこのページを作っているのはみなさんに気象に興味を持って貰いたいという意思はあります)



周りくどくなりましたが、自分で予想できなくとも、人の予想を入手できればいいのです。

私は下で紹介する携帯電話の有料気象サービスを申し込んでいます。このサービスには「山岳気象」とか「登山ハイキング天気」というコーナーがあり山岳毎に予報が見られます。これらの予報には当然に高層天気情報はインプットされていると思われ、実際今回も木曜日の朝発表分より、妙高山(私が週末行こうとしていたのでチェックしていた)の週末の天気は、最高2℃、最低0℃、「雪」との予報になりました。木曜朝の段階でスーパーコンピューターは土曜日の図3-1は大方予想できたのです。
木曜朝の時点なら、中止とか場所変更など考えるゆとりはあったはずです。これを見逃してはならないでしょう。正に命取りの情報と思います。

ちなみに日曜日の天気図(図4)。三陸沖低気圧は発達し日本付近は相変わらずの等圧線が縦縞状態でした。

翌日の天気回復を信じ、私も八ヶ岳に向かいましたが道中凄い風でした。10時頃、山麓から八ヶ岳を見上げてもガスの中。日本海に面していない八ヶ岳ですらまだ冬型真っ只中でした。

 

連休最終日の月曜は八ヶ岳では秋晴れ快晴の一日でした。赤岳山頂では360度の超展望が得られました。皮肉にも北アルプスは真っ白に冠雪し輝いていました。

図2図3-2にならなかったのと、図4図5になったのの差は上空の空気の質の差です。土曜日には暖気と寒気がぶつかり合っていましたが、月曜日にはすっかり暖気がなくなり冷たい安定した空気が日本上空を覆っていました。こうなると地上天気も三陸沖の低気圧は勢力を弱め始め、高気圧が張り出してくるのです。

   

上空の天気図は、こちらから入手できます。ご興味のある方はぜひ気象関連のサイトを覗き、高層図の見方を勉強すべきと思います。
そこまでできません。という方もぜひ山岳情報入手を考えてください。私は回し物でもないし、気象関係の職に着いている訳でもないのでCMしても仕方がないのですが、今回のようなことがあると薦めざるえません。携帯サイトなどで少なくとも山岳気象情報が入手できます。情報収集環境は登山者個人自身で整えるべきと感じています。 (インターネットでも夏にはtenki.jpで登山情報が見れました)

   
   

ご参考

私の使っている有料携帯サイト

天気Plus

by Weather News

 
  

105円/月

民間の草分けウェザーニュースのサイト。山の天気も頻繁に更新され、見やすい構成。

 

お天気Premium

by 日本気象協会

  

105円/月

天気図など情報が充実。山のサイトも山と渓谷社と提携し山小屋情報など充実している。しかし週間天気に曜日が表示されないなど、使いづらい。もうすこしCSを考えて欲しいところ。

   
※私は趣味で両方見て比較していますが、どちらかで充分だと思います。
   

 

 「あのような天気のときに北アルプス行くなんて」「防寒対策が甘すぎる」などと結果論で論評したり、「秋の天気はコワイんだ気をつけろ」などと総論を言うのは容易い事ですが、明日はわが身と常に思い色々勉強する必要があると思います。今回遭難したみなさんも、まさか自分がであったと思います。ともあれ気をつけましょう。